オークラ・ペストリーの世界

イーストを使ってパンを作るときのコツ ― 天然酵母とはどう違う?

監修者プロフィール

監修

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。以来、ホテルオークラ東京の洋菓子を支える。
シェフズガーデン カメリアに並ぶペストリーのほか、ダイニングカフェ カメリアご宴会ウェディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。
趣味は野球観戦と、きれいな料理の盛り付け画像を探すこと。

酵母の発酵を利用して作る食品には、日本酒、ワイン、醤油、味噌などがありますが、パンを作るときの代表的な酵母がイーストです。小麦粉や水などの材料にイーストを混ぜることによって、パンはおいしく膨らみます。 今回は、知られているようで実はあまり知られていないイーストについて詳しく解説します。天然酵母とイーストの違いや、イーストを使ったパンづくりのコツについてもご紹介いたします。

パン作りに欠かせないイーストの基礎知識

イーストイメージ画像
イーストとは?

イーストという言葉は、パン作りの経験がない方でも耳にされたことがあるのではないでしょうか。イーストは英語でyeastとつづります。yeastを日本語訳すると「酵母」なのですが、日本でイースト(イースト菌)といえば「天然に存在する酵母のうち、特にパンの発酵に適したもののみを抽出し、純粋培養した酵母」のことを指します。イースト菌のことをパン酵母と呼ぶこともあります。

イーストの登場

パンは6000年前のメソポタミア文明の時代から食べられていたと言われますが、イースト菌が本格的に登場したのは19世紀のことです。その立役者は、理科の教科書でもおなじみの生化学者・細菌学者のパスツールで、彼は発酵が微生物の働きによるものということを解明しました。その後、戦争による食糧問題などもあり、パンの安定的な大量生産を可能とするイーストは重要性を高めていきました。
そして現代でも、手軽にパンを膨らませられるイーストは、市販のパンから自家製パンづくりまで幅広く使用されています。

酵母とパンの関係性

では、酵母とはいったいどのようなものでしょうか。酵母にはいろいろな種類がありますが、球形または卵形をした単細胞生物で、カビやキノコと同じ菌類に属しています。生き物である酵母が糖類を食べてアルコールと炭酸ガスに分解し、生成された炭酸ガスがパン生地の中で無数の気泡となります。その結果、ふっくらとしたパンが焼き上がります。

イーストと天然酵母との違い

パン作りに使用される酵母は、大きく分けてイーストと天然酵母に分けられます。天然酵母という言葉は店頭で目にされたことがあるかもしれませんが、イーストとの違いについてご存知でしょうか。
実は、イーストも自然界にあるパンに適した酵母を純粋培養したものですので、人工的なものではなく天然のものです。したがって、イーストも天然酵母の一種です。大きな違いとしては、イーストがパンに適した単一の酵素だけを培養したものであるのに対して、天然酵母はぶどうなどの果物や穀物についた複数の野生の酵母を使用します。天然酵母を使って作ったパンは、酵母の果実や穀物、乳酸菌などの微生物によって、イーストで作ったパンと比較すると独特な風味や匂い、食感があります。
その一方で、発酵力はイースト菌よりも弱く、安定性に欠けます。また、気温や湿度などの条件に強く影響を受けてしまうので、パン職人でさえ天然酵母を作ったパンづくりには失敗するケースがあります。

また、天然酵母がまったくの自然由来かといえばそうではない場合が多く、ほとんどの天然酵母は工場で培養されています。また、天然酵母にイーストを加えて、強度を増したり、発酵力を高めたりする方法もあります。

イーストの主な種類

生イースト

生イーストは、豆腐や粘土のような見た目の特徴をしています。湿り気があり、力を加えるとぼろぼろと崩れます。そのままの状態でも甘いイーストの香りがします。乾燥に弱く、冷蔵保存が必須です。賞味期限が10日~2週間程度と短めで、個人では使い切ることが難しいこともあり、主にパン屋や飲食店などでの業務用として使用されます。
個人で生イーストを購入する場合には、何人かで共同で購入したり、生イーストを使った料理(ピザなど)、お菓子(ドーナツや蒸しパンなど)をつくったり、といった余らせないための工夫が必要かもしれません。 生イーストは、ドライイーストに比べて、膨らみが良く、香りが良いという特徴があります。そのため、ふんわりした食感のパンや食パンなどをつくるのに適しています。
発酵時間がドライイーストに比べて短いという特徴がありますが、長時間発酵させてしまうと酵母菌が糖類を食べつくしてしまい、ぼそぼそした食感になってしまいます。

ドライイースト

ドライイーストは、生イーストを長時間ゆっくり加熱して乾燥させたものです。加熱によって一部のイーストが死滅してしまいますが、結果的に死滅したイーストがパンをおいしくしてくれます。
見た目は粒状で、乾いています。ドライイーストの機能面での最大の特徴は、安定した発酵力と保存のしやすさです。未開封であれば長期保存が可能ですし、開封後でも密封して冷蔵庫で保存すれば、比較的長期間の保存が可能です。温度や湿度の影響を受けにくく、分量を測ってつくれば毎回同じように作れることから、パン教室や製パン本のレシピはドライイーストを使用した場合のものが多いです。使用する際は、ぬるま湯に入れて予備発酵させてから使います。
どんなパンにも対応でき、オールマイティで使いやすいドライイーストですが、特にフランスパンやバゲットなど甘みの少ないパンを作るのに適しています。添加物として乳化剤が入っているものが多いです。

インスタントドライイースト

インスタントドライイーストは、生イーストをドライイーストよりも短時間で乾燥させたものです。ドライイーストよりも粒が細かく、非常に強い発酵力を持っています。また、予備発酵をしなくても使用できるため、最も手軽で一般的です。スーパーなどで家庭用のパンづくりのために販売されているイーストはこのインスタントドライイーストのタイプが多いです。「インスタント」の記載がなくても、「予備発酵不要」の文言があれば、ドライイーストではなく、インスタントドライイーストです。
これはドライイーストと一緒で、オールマイティに使用でき、初心者でもパンづくりに失敗しにくい酵母です。開封後はドライイーストよりも劣化が早いため、注意が必要です。また、冷蔵庫で保管すること、添加物として乳化剤が入っているものが多いこともドライイーストと同様です。

イーストを使って家庭でパンを作る際のコツ

温度管理が重要

イーストを使用するときに最も重要なことは温度管理です。イーストは生き物なので、活動しやすい環境を整えなければなりません。イーストは約10℃以上で増殖し始め、60℃以上になると死滅してしまいます。生イーストはもちろんのこと、インスタントドライイーストでも、イースト菌の温度管理に注意しなければなりません。温度管理が不十分の場合には、生地が膨らまないなどの失敗の可能性が高くなります。

発酵に適した温度
予備発酵

ドライイーストの場合のみ予備発酵が必要です。予備発酵に適した温度は40~41℃で、発酵時間は約15分です。一般的にはぬるま湯を使って温度管理します。湯せんをして6~7分経過後、ホイッパーで攪拌したら温度を40~41℃に維持します。7~8分後、生地がムース状になり、フルーティな香りがしてきたら、発酵ができたサインです。

成型後の発酵

パンの種類にもよりますが、一般的に成型後の発酵(二次発酵)に適した温度は36~38℃です。二次発酵はパンを焼く直前に行うので、オーブンで行います。天板にオーブンシートを敷き、生地を置いたのち乾燥させないようにラップをかけます。発酵までの時間は湿度や気温にも左右されますので、パンの状態を見て確かめることが重要です。焼くタイミングの目安は、天板をゆすってみて、少し遅れて生地が揺れる程度です。
オーブンで焼き始めると、60℃以上になりますので、イーストは働かなくなり、パンの形が出来上がります。

生地づくりのコツ
  • 材料をよくこねて混ぜ合わせ、粘り気と弾力のある生地をつくること
    生地をこねることで、小麦粉に含まれるグルテンというたんぱく質が膜をつくります。こね不足の場合には、パンがうまく膨らみません。
  • こねる、たたむ、たたくなど基本的な手順に沿って行うこと
    グルテンの膜をつくるためには、こねる、たたむ、たたくという手順が重要です。たくさんの空気を抱き込んで、グルテンを生成させ、弾力と粘りを出します。表面が滑らかになるまで、この手順を繰り返します。

食卓でパンをいただけるのは、イーストのおかげ

パンをおいしく膨らませる働きを持つイーストについて紹介しました。イーストの役割や使い方について、イメージしていただけたのではないでしょうか。
イーストのおかげで、誰でも手軽に、シンプルなレシピに沿った作り方でパンが作れるようになりました。また、パン工場での大量生産も可能になりました。もしイーストが存在しなかったら、気軽にパンを食べることができなかったかもしれません。イーストは、私たちの食卓にパンを届けてくれた存在、と言ってよいかもしれません。

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