果物を砂糖と一緒に煮詰めて作るコンフィチュール。仕上がりや作り方、食べ方などはジャムととてもよく似ていますが、ジャムとの違いについてご存知でしょうか。もともと、コンフィチュールは保存食として作られましたが、果物の素材感を楽しむことができます。パンにサンドする以外に、さまざまな方法でおいしく召し上がることができます。今回は、コンフィチュールがどのようなものかを紹介しながら、レシピやおいしい食べ方についてもご紹介いたします。

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。


コンフィチュールの特徴とジャム、コンポートとの違い

コンフィチュール(confiture)とは

コンフィチュールとは、主に果物をシロップや香辛料などと一緒に煮詰めて作る保存に適した食べ物です。「砂糖や酢、油などに漬ける」という意味の「コンフィット(confit)」というフランス語が語源です。

ジャムやコンポートとの違い

コンフィチュールによく似ているのが、ジャムとコンポートです。それぞれの違いについて見てみましょう。

・ジャム
朝食にもおなじみのジャムも、コンフィチュールと同じく果物に砂糖を加え、煮詰めた保存食です。ジャムは英語で「詰め込む、いっぱいにする」という意味の言葉です。コンフィチュールは果物の形状が残っていてさらりとしたものが一般的ですが、ジャムはゼリーの状態になるまでよく煮詰めたものが多く、材料の原型をとどめていないこともあります。ちなみに、ジャムにとろみがつくのは、果物に含まれるペクチンに酸と糖分が混ざって化学反応を起こすためです。違いをもう一つ言えば、日本農林規格にて、糖度40度以上のものが「ジャム」と定義されていますが、コンフィチュールはジャムよりも砂糖の量が少なめのものが多いです。また、広い意味でのジャム類の中には、柑橘系の果実を材料として皮を使用したマーマレード、果汁を原料としてゼラチンなどで固めたゼリーも含まれています。

・コンポート
コンポートは、砂糖やアルコールの入ったシロップで、形を崩さないように果物を煮たもののことです。一般的に、ジャムやコンフィチュールよりも使用する砂糖の量が少なめです。保存食にはならないため、数日中に食べきる必要があります。


コンフィチュールの材料と作り方

コンフィチュールの主な材料

コンフィチュールの主な材料は、お好みの果物と砂糖です。桃、イチゴ、キウイなど、どんな果物でも作れます。仕上げの直前に絞ったレモン汁を加えると色味がきれいで鮮やかになります。それは、レモンに含まれるクエン酸に発色を良くする効果があるためです。
コンフィチュールは長期保存できますが、時間が経過するとともに、果実感が失われる可能性があるため、数日で食べきれる量を作るのがおすすめです。

コンフィチュールの一般的な作り方

コンフィチュールの一般的な作り方の手順です。コンフィチュールは、短い調理時間で、簡単に仕上げられます。

1. 果物をさっと洗い、水気を切ります(イチゴなどヘタのある果物はヘタを切り落とします)。
2. 容器に果物と砂糖(グラニュー糖)を入れて混ぜます。
3. しばらく(30分~1時間程度)置き、果汁を浸出させます。
4. 3を鍋に移して蓋をして中火にかけ一度沸騰させ、弱火で15~30分程度クツクツ煮詰めたら完成です(アクが出たら丁寧にすくい取ってください)。

材料の分量は、果物と砂糖が同量であればトロトロとした「ジャム」に近くなりますし、果物に対して20%程度の加糖であれば、ソースのようなコンフィチュールが出来上がります。
出来上がったコンフィチュールは、瓶などに詰めておくと見た目もおしゃれですが、必ず鍋にお湯を沸かし、その中に瓶を入れ、煮沸消毒をしてください。瓶詰する際の注意点はいくつかありますが、最も大事な事は早めに食べ切れる量にする事と中心温度を素早く落とす(冷ます)事で雑菌の繁殖・増殖を防ぐ事です。

※柑橘系は苦味や渋味が強く出る事があるので、皮の処理や火の入れ方、使う鍋をホーローにするなどいくつか注意が必要です。


コンフィチュールのおいしい食べ方

パンやクラッカーに付ける

コンフィチュールをパンやクラッカーにサンドすれば、ジャムと同じような楽しみ方ができます。果物の素材感を楽しみながら、召し上がってください。

紅茶に入れる

香りの相性がとても良い紅茶に入れて楽しむ召し上がり方もおすすめです。コンフィチュールをどれだけ入れるかで甘さの調節ができ、手軽にフルーツティーを楽しめます。

チーズに乗せる

ラズベリーやブルーベリー、アプリコットや桃などのコンフィチュールは、チーズとの相性も抜群です。ハード系チーズの塩味が果物の甘さを引き立ててくれます。チーズに乗せたコンフィチュールは、ワインのおつまみにもピッタリです。

炭酸水で割って飲む

コンフィチュールを炭酸水に混ぜれば、さわやかな風味の炭酸ジュースとして楽しむことができます。特に甘酸っぱい果物は炭酸とよく合います。


春におすすめ!旬の果物を活かした手軽でおいしいコンフィチュール

保存性を高めつつ、果物の果肉そのものの食感を楽しめるコンフィチュールは、作り方も召し上がり方もとても手軽なところが魅力です。好みの果物と砂糖で作ることができて、様々なお食事ととても幅広く楽しむことができます。
生食では少し味の落ちた果物や、まだ熟していない果物に火を入れる事で、風味が増す事があります。砂糖の分量もお好みで加減すると、同じ果物でもかなり味わいが異なります。
コーティングされたフライパンを使用し、果物と適切な量の砂糖で少量のコンフィチュールを手軽に作り、食卓を彩ってみてはいかがでしょうか。
イチゴを含むベリー各種、またはこれをミックスして、そのままだとちょっと酸っぱいキウイやレモンなど、果物が美味しくなる春の季節にもぜひ作ってみてください。

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