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カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴とは?代表的な産地とおすすめワイン

執筆者プロフィール

ソムリエ 平原 誠次

8年間のフランス修行を経て入社後、さざんかソムリエ。
ブルゴーニュワインや甘口ワインを得意とし、A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を取得している。

昨今、日本にも世界中の多様なワインが押し寄せてきて、スーパーやコンビニエンスストアにまであふれています。
今回は、その中でも特に知名度が高いぶどう品種、カベルネ・ソーヴィニヨンに迫ってみようと思います。

カベルネ・ソーヴィニヨンとは?

ワインイメージ画像

ワインにあまり興味が無い方にも名前を知られている、ちょっとした有名人であり、「高貴な品種」とも呼ばれます。長熟なワインの生産に使用されることが多く、ブルゴーニュの主要品種であるピノ・ノワールに比べて病害や霜害に強いのが特長です。
果実の粒の大きさは小指の先ほどで、表皮は青黒く、つぶすと色素(アントシアニン)の濃い果汁がほとばしります。収穫前のぶどうを一粒口に含んでみると、果汁は少量ですがカシスを凝縮したような甘み、酸味と皮の渋味(タンニン)が口いっぱいに広がります。
元々はカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配から生まれたとされ、17世紀頃からボルドーで使用されていたとの記述が文献にあります。礫質で水はけのいい土壌が栽培に適しています。

カベルネ・ソーヴィニヨンの味わい

フランス、ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨン100%で仕込まれるワインはほとんどありません。ワインを調合するアッサンブラージュのテクニックこそがMaître de Chai (醸造責任者)の腕の見せどころ。補助品種とのアッサンブラージュを経て瓶詰めされ、長期熟成向けのワインとなります。
若いうちはやや単調で、タンニンが豊富な点とグリーンノートがある点が特徴ですが、熟成が進むにつれて、複雑な芳香やベルベットを折り重ねたようなしなやかなタンニンを持ったワインへと変貌していきます。
グリーンノートは微量ならば気になりませんが、あまりに強く感じられる場合には、青臭く欠点のあるワインと評価されます。カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンに顕著に現れる香りで、「イソブチルメトキシピラジン」という芳香成分が香りの元となっています。

代表的な産地

フランス ボルドー地方

カベルネ・ソーヴィニヨンはジロンド川左岸、砂利質土壌のメドック地区で多く栽培されています。ボルドー市はパリやマルセイユなどに次ぐフランス第5の中堅都市で、ワイン産業が盛んです。ボルドー地方はブルゴーニュ地方と違い、都市部は開けていて近代的な街並みが広がっています。代表的なワインは「おすすめのワイン」でご紹介します。
ボルドーはイギリスにワインを輸出していた歴史があり、イギリス人の好みに合わせて、豊かな酸味を持つカベルネ・フランや果実味のあるメルロ、色味の調整のためプティ・ヴェルドといった具合に、カベルネ・ソーヴィニヨンと補助品種をアッサンブラージュしてきました。結果的にワインに複雑さを付与することができ、天候不良の不作時にも別の品種で補うことができるという利点がありました。
現在、ジロンド川左岸ではカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としてアッサンブラージュする生産者が多く存在しています。それはこのぶどうがワインの骨格を形成し、熟成とともに真価を発揮するため、長期熟成向けのワインには欠かせない品種であることを意味しています。

アメリカ カリフォルニア州

アメリカのワイン生産の歴史はヨーロッパに比べて遅れてスタートしましたが、歴史や伝統に捉われず、ドラスティックに技術改革が行われています。1976年の『パリ対決』でその実力を世界中に知らしめたカリフォルニアワイン。ナパ・バレーを中心にカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインが生産され、高い評価を得ています。近年はしなやかでエレガントなテクスチャーを持つワインが増え、濃くてパワフルといった従来のイメージは払拭されています。ボルドーではアッサンブラージュがメインですが、カリフォルニアではシルバー・オーク・ワイナリーを筆頭に100%カベルネ・ソーヴィニヨンのワインも存在しています。地質学や栽培学の進歩により、区画ごとのきめ細やかなケアと土壌に合った苗木の選定(クローン含む)が確立されてきているためでしょう。

【代表的なワイン】
オーパス・ワン
ロバート・モンダヴィとバロン・フィリップが共同で1980年に立ち上げたワイナリー。ワインの味わいのハーモニーをオーケストラに例え、音楽用語を使って「作品番号1番」とネーミングしました。最高品質を追い求める姿勢は他の追随を許しません。
ケンゾー・エステイト
カプコン創業者の辻本憲三氏が創業。日本人の繊細な感性で造られるジャパニーズ・ナパワインで、2001年が最初の収穫でした。2009年に自社ワイナリーが完成し、アメリカ政府が認定するエステートボトルの称号を得ました。
チリ

チリがフランスを抜いて日本のワイン輸入量トップになったのは最近のこと。日本のワイン消費量が増え、質より量を求める消費者が増えている証でしょう。チリは南北に細長い国土のため、北部は赤道に近く、南部は寒くてぶどう栽培には向きません。したがって栽培地域は中央付近のセントラルバレーに限られ、東はアンデス山脈、西は太平洋に面した海洋性気候で乾燥しているため、ぶどう栽培に向いた気候です。
日本ではスーパーやコンビニエンスストアなど、身近なお店で購入できるのもチリワインのありがたいところ。昨今では、こういった小売店に置かれているのはほとんどがチリワインと言っても過言ではないほどです。

【代表的なワイン】
アルパカ
羊のマークでおなじみ、気軽に飲めるワインです。
コノスル
自転車の絵が書いてあるワイン。オーガニックシリーズもあるほどバラエティに富んでいます。

おすすめのワイン

カベルネ・ソーヴィニヨンを使ったワイン生産者の中から、私がおすすめする生産者をご紹介します。

シャトー・ラグランジュ

フランス、ボルドー地方メドック地区にあるサンジュリアン村の3級格付けシャトー。1983年より親会社となったサントリーの強力なテコ入れのもと、徹底的に改革されて成長を続けているシャトーです。

シャトー・コルディアン・バージュ

ボルドー地方メドック地区のポイヤック村にあるシャトー。格付け5級のシャトー・ランシュバージュを保有するジャン・ミッシェル・カーズ家がオーナーです。ワインも秀逸ですが、併設するレストランはミシュラン2つ星を獲得している名ホテルレストラン。ボルドー訪問の際は立ち寄る価値のあるシャトーです。

長期熟成向けのフランスワインには、深みのあるお料理がよく合います。「仔羊のタジン鍋煮込み」は、北アフリカ地方で多く用いられるタジンという土鍋を使った煮込み料理です。香りのある仔羊の腿肉をハーブと赤ワインで柔らかく蒸し煮にし、プルーンやアプリコットの温製をアクセントに仕上げた豪快な一皿です。

シルバー・オーク

カリフォルニアで約40年前に創立された比較的若いワイナリー。いくつかの自社畑と契約農家から供給されるぶどうを使い、100%カベルネ・ソーヴィニヨンのワインのみを造っています。甘いオークの香り、身の詰まった果実、これぞアメリカンパワー!と感じさせる味わいです。

スタッグス・リープ

前述の『パリ対決』で一躍世界に名の売れたカリフォルニアワインで、カリフォルニアにおけるカベルネ・ソーヴィニヨンの祖とも言えます。最近では最新の自動選果機をいち早く投入するなど、設備投資にも積極的に取り組んでいる老舗ワイナリー。

タンニンが豊富で力強いアメリカンワインには、グレインフェッド(穀物飼育)の赤身熟成肉のステーキを。超高温オーブンで肉表面を焼き固め、カリッと焦げ目をつけた肉を噛みしめると、自然とパワフルなワインが欲しくなります。

セーニャ

オーパス・ワンのロバート・モンダヴィと、チリの名門エラスリス社エデュアルド・チャドウィックが共同で造り出したワイナリー。カベルネ・ソーヴィニヨンにチリ固有品種カルメネールをブレンドし、凝縮された味わいでコストパフォーマンスに優れています。

チリワインのスタイルはフランスワインと似た要素が多いので、やはり肉料理と相性が良いです。フレンチのような洒落たスタイルではなく、香辛料を効かせたサルサソースや、玉ねぎのみじん切りにビネガー、黒こしょう、ハーブを和えた「チミチュリ」をソースにして、さっぱりといただくカジュアルスタイルがおすすめです。

ドメイヌソガ サンシミ カベルネ・ソーヴィニヨン ムラサキ第七農場

長野県にある老舗ワイナリー。「サンシミ」とはSans Chimieというフランス語で、「科学的な農薬不使用」という意味です。日本では一般的に契約農家のぶどうを使用することが多い中、自社畑にこだわりを持ち、その比率を高めています。まさにアルティザン(職人)気質と言われる曽我オーナーの気持ちが込められたワイン造りに定評があります。流通量が少ないため見かけることはあまりありませんが、いつかは味わってみたい一本です。

脂肪が少なく、クセが少ない「蝦夷鹿のココットロースト」がおすすめです。冬にいただくジビエは滋味にあふれ、味わい深い料理になります。ココットに藁とローズマリーなどのハーブを入れることで、軽くいぶした燻製仕上げにします。煮詰めた赤ワインにきのこやトリュフをあしらったソースで、リッチな一皿にしてみてはいかがでしょうか。

最後に

カベルネ・ソーヴィニヨンを使ったワインは手が届くところにあります。カジュアルなテイストから、長期熟成ワインまで幅広いタイプのワインが愉しめます。社交の場で、時には大切な人と過ごすお供として、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインを選んでみてはいかがでしょうか。

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